アンチエイジング研究や認知症研究の第一人者、白澤卓二氏(医学博士、白澤抗加齢研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長、千葉大学予防医学センター客員教授)によると、認知症は改善できる病気になってきているそうです。
ただまだ、いろいろな治療やリハビリで、初期であれば症状がやや改善できる可能性が出てきたところで、もしできるなら、認知症にはなりたくないですよね。
認知症の患者さんは、日本では約602万人(2020年、高齢者の6人に1人)と言われていますが、認知症の原因もまだ仮説の段階です。アルツハイマー型認知症は、今まで、脳内にアミロイドという物質がたまってしまうからだと言われており莫大な投資でアミロイドを溶かす薬の開発をしましたが、それで治療することはできませんでした。
今最も有力と考えられているのが、認知症は「炎症」「栄養不足」「毒素」という3つの脅威に体が晒(さら)されると「防御反応」としてアミロイドを脳内に集積させ、脳を守ろうとする、という説です。つまり、この3つの原因を改善しないと、脳内にアミロイドが過剰に集積し、脳神経を破壊し認知症になるのです。
「炎症」…例えば、歯周病などによる体内の慢性炎症、トランス脂肪酸やカビ等がもたらす慢性的な感染による炎症。
「栄養不足」…例えば、ビタミンやホルモンなどの不足により代謝がスムーズに行われない、インスリンが正常に働かずブドウ糖がうまく使えない、など。
「毒物」…水銀、ヒ素、農薬、殺虫剤・除草剤、たばこ、カビ、病原菌などが作り出す毒素などが体内にあること。
そして「リコード法」という治療法が最近注目されています。これは、デール・プレデセン博士が開発した治療法で、機能性医学に基づき、体の炎症を抑え、体に溜まった毒素を解毒する治療法。この療法で、予防だけでなく、やや進んだアルツハイマー病患者さんの症状に改善が見られたことも報告されています。
結局は、普段から健康な身体を保ち、正しい食事・規則正しい生活をすれば良いのかなと思いますが、でもこれが、なかなか難しいんですよね!そこで、白澤氏やリコード法がおすすめしている認知症予防に大事な食事、運動、睡眠のポイントを簡単に見ていきたいと思います。
認知症予防のための食事について
認知症予防のために白澤氏が考える食事のポイントは、「添加物を避けて、いろいろな食材をまんべんなく食べる」こと。「多様な食材を摂ることが脳の健康につながる」のです。
◆ただその中でも「小麦粉」「添加物」に特に注意を促しています。
▼小麦粉について
近年小麦アレルギーやセリアック病が増えていますが、これは、小麦粉のグルテン(タンパク質)によってアレルギーが起こり、小腸に炎症が起きてしまう病気です。小麦はまた、脳の萎縮・炎症にも悪影響を及ぼす事が知られています。
認知症予防には、体内での炎症をなるべく起こさないことが大事なので、なるべく小麦粉を取らないような食事(グルテンフリー)を勧めています。
でも今や小麦粉は日本人の食生活でも、とてもポピュラー。どうしても小麦粉を食べたいという場合は、白澤氏によると、国産小麦やフランス産小麦を使っている製品を選ぶと良いそうです。理由は、北米産などの小麦と比べると、国産やフランス産は品種改良があまり行われていないし、炎症の原因となるグルテン量も少ないからです。
▼食品添加物について
食品添加物は、やはり脳にとっては「毒」。食品添加物が多く入った食材を避けることはもちろん、基本的な調味料選びにも気を配ることを勧めています。
例えば、お味噌や醤油などはなるべく保存料が入っていないもの(ろ過していないもろみしょうゆやしょうゆ麹などが安心)、塩は海塩や塩麹、砂糖は精製されていない黒砂糖やてんさい糖を少なめに使うこと、フルーツなどの果糖を代用すること、などを勧めています。
◆認知症予防にいいと白澤氏おすすめの食品成分
(1)フェルラ酸
精製していない米や小麦、大麦などの穀類、米ぬかなどに多く含まれる成分で、ストレスをやわらげます。
(2)LDLコレステロール
コレステロールは特に高齢になると敬遠しがちですが、神経系の働きの活性化のために必要です。卵に豊富に含まれます。
(3)食物繊維
海藻類、こんにゃく、果物、里いも、大麦、オーツ麦などに含まれる「水溶性食物繊維」が特におすすめ。脳と密接な関わりのある腸内環境を整えます。
(4)イソチオシアネート
キャベツ、ブロッコリー、白菜、チンゲン菜、カブ、ルッコラ、カラシなどのアブラナ科の野菜に多く含まれます。抗酸化作用があり、抗がん作用、動脈硬化予防、認知機能改善が期待されます。
(5)フラボノイド
色の濃い野菜や果物、緑茶、赤ワイン、ココアなどに多く含まれます。ポリフェノールの一種で抗酸化作用があり、記憶力を高めることが期待されます。
◆「リコード法」の治療プログラムのおすすめ
リコード法の治療プログラムでは、次の3つが推奨されています。
(1)糖類、パン、ジャガイモ、白米、ソフトドリンクなどの単純炭水化物食品を最小限にする(低炭水化物食、つまりは糖質制限)
(2)適度な運動(早歩きや、より激しい運動を週150分以上行う)
(3)毎日少なくとも12時間の絶食(夕飯から朝食まで12時間は空ける)
そして、頻繁に食べたい食品は、デトックス効果のあるブロッコリー・カリフラワーなどアブラナ科の野菜、ケール・ホウレンソウなどの葉物野菜、タマネギ・ニンニクなど硫黄化合物を含む野菜、キノコ類、クズイモ・ネギ・キクイモなどのプレバイオティクス食品(腸内の善玉菌にエサを与え増殖を促す食品)など。
また、天然の魚(特に水銀汚染の少ないサケ、サバ、アンチョビ/カタクチイワシ、イワシ、ニシンは積極的に摂りたい)、平飼い卵、キムチ・ザワークラウトなどのプレバイオティクス食品なども、お勧め食品。
逆に、なるべく最小限に抑えたいのが、パン、パスタ、コメ、ケーキ、ソーダなど単純炭水化物メインの食品。そして、穀類、加工食品、水銀汚染リスクが高いマグロ・サメ・カジキマグロなど、パイナップル等甘いフルーツ、グルテン・乳製品など過敏性が出やすい食品など。
チーズや、オーガニックの全乳、プレーンヨーグルトは、時々であれば良いそうです。
◎添加物の無い・少ない食品は、自然食品店やオーガニックストアで購入できますが、近所に無い場合は、安心できる無農薬やオーガニック食材を宅配している会社(生協、おいしっくす、大地を守る会、らでぃっしゅぼーや等)で注文する方法もあります。
次のページで、いろいろな宅配の比較をご覧いただけます。
>> 無農薬野菜やオーガニック食品の宅配が、便利!
認知症予防のための運動について
認知機能を正常に保つには、脳からの情報を伝達する重要な神経が通っている背骨、つまり脊柱がとても大事です。脊柱管狭窄症という症状が出た多くの人は、認知機能が落ちることが分かっています。なので、背骨を動かし鍛えることが、神経系の刺激に役立ちます。
それには、GYROTONICR(ジャイロトニック)というメソッドがとても有効だとのこと。ジャイロトニックとは、NYのバレエダンサーが考案したエクササイズで、木製のマシンを使いながら、ヨガ・太極拳・ダンス・水泳の流れるような柔らかい動きを行い、無理に圧をかけたり力を入れたりせず、体が持つ本来のしなやかさを取り戻すトレーニング。
ヨガやピラティスをやるように、このエクササイズにスタジオに通う人も増えています。セレブにも人気のあるトレーニングです。
このエクササイズで、背骨をすべての方向に動かすことができ、神経刺激につながります。このマシンを使ったトレーニングを行うと、普段も歩いている時に自然に背骨を回旋できるようになるのです。
また、もっと手軽な運動が、バランスボール。バランスボールに座ると、背骨まわりの筋肉を鍛えることができるそうです。
「椅子の上に小さなバランスボールを置いて、その上に座ると、背中まわりの筋肉や体幹を鍛えることができます。バランスボールは、筋肉が衰えた高齢者でもラクに効果的にトレーニングができるでしょう」(白澤氏)
認知症予防のための睡眠について
睡眠不足は、肥満、生活習慣病、うつ病などあらゆる病気の発症原因のひとつだと考えられていますが、アルツハイマー型認知症の発症にも関係していると考えられています。
深い眠りに入っているときは、脳にたまった老廃物(アミロイド)が排出され、認知症の原因となる物質が蓄積しにくくなるのですが、睡眠不足だったり眠りが浅かったりして深い眠り(ノンレム睡眠)ができないと、アミロイドが徐々に脳に蓄積され、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる可能性があります。
最適な睡眠時間は人によって違いますが、眠りの浅い人は、日中に運動したり睡眠環境を整えるなどして深い睡眠が得られる工夫をする必要があります。
また同時に、日々の生活では、脳に刺激を与えられるように、あまり退屈しない若々しい環境に身を置くことが大事です。
◎さらに認知症のことを知りたいのであれば、次の本がお勧めです。
>> アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム (デール・ブレデセン著、 白澤 卓二監修)