赤身の肉や加工肉(ハム、ソーセージなど)は体に悪い、がん発症の危険もあると言われ、鶏肉は大丈夫などとよく言いますが、具体的にどうなのでしょうか。最近友人知人にとても癌が多く、食事療法をしている人もいるので、発症前に食事で少しでも予防できるならと思い少し調べてみました。
いろいろ見ていたら、カリフォルニア大学サンフランシスコ校にあるオッシャーセンター・フォー・インテグレイティブ・ヘルスが発表している「動物性タンパク質とがんリスク」という報告を見つけました。たんぱく質はとても大事な栄養素。肉好きで卵もよく食べる私には、大変参考になります。
※Osher Center for Integrative Healthは、Brigham and Women’s HospitalとHarvard Medical Schoolが連携して運営する機関です。
大変多くの調査研究結果を横断的に分析していて、信頼性もありますし、分かりやすいです。詳しくは下記のURLにありますが、まとめのガイドラインで推奨されていることは、次のようなことです。
(https://osher.ucsf.edu/patient-care/integrative-medicine-resources/cancer-and-nutrition/faq/animal-protein-cancer-risk)
◆まず、食事に色とりどりの果物や野菜を多種多様に取り入れること。
(肉と一緒に野菜を摂ると、カルシウム、クロロフィル、ビタミン C、ポリフェノールが豊富に摂取でき、肉類に含まれるヘム鉄の悪影響を軽減する可能性がある)
◆そして、植物由来(豆、レンズ豆、ナッツ、種子)も含めて、動物性ではない様々な食材からたんぱく質を摂ること。
◆週に2回以上、魚を食べることを目標にする。(脂身が多いほど良い)
◆皮を取り除いた鶏肉が、次善の選択肢。
◆卵は週に1回か2回までにする。(スクランブルや目玉焼きよりも、半熟や固ゆでの方がおすすめ)
※生殖器系のがんを患ったことがある場合や、乳がん、卵巣がん、前立腺がんのリスクが高い人は、卵を完全に避けることを検討したほうがいいかもしれない。
◆赤身の肉は、週に1回以下に制限し、高温(摂氏200度以上)での調理は避けること。
(できれば、100% 牧草飼育または牧草地で飼育されたものが最適。牧草飼育や牧場で飼育された動物は、コレステロールが自然に低く、オメガ3脂肪酸が豊富な肉、乳製品、卵を生産するので食品の炎症性の可能性は低くなるため)
◆動物性タンパク質(牛・豚・鶏・魚など)を高温(摂氏200度以上)で調理するのは、発がん性物質HCAが生成されるため、避ける。
⇒ 調理中に肉をひっくり返す頻度を増やすと、肉を熱面に置いておく時間を減らせるので、HCAの生成を減少できる。
⇒ 直火を避ける調理法(蒸す、茹でる、煮込む等)を選ぶと良い。
(HCAの生成は、グリルする前にマリネする、電子レンジで短時間調理すること等で減少できる)
⇒ マリネにしたりして、抗酸化物質を加えるのも良い。
◆動物性タンパク質を、焦がす・揚げる調理法は避ける。
◆加工肉・塩漬け肉を摂取するのは避ける。肉汁から作ったグレービーも避ける。
【その他、報告で気になった事】
上記のガイドライン以外に、多くの調査研究結果を分析した内容が書かれていますが、その中で気になった、役立ちそうなことは次のことです。
▼レビューした研究では、食道がん、肺がん、膵臓がん、大腸がん、乳がん、胃がんと肉の多量摂取の間には正の相関関係が示されたが、子宮内膜がん、膀胱がん、卵巣がんと肉の多量摂取の相関関係は、結果がまちまちだった。
▼飼料に使用される農薬や動物に投与される薬剤やホルモンは、私たちが消費する肉に毒性の残留物を残す可能性がある。
▼乳製品は、がんリスクと負の関連と正の関連の両方を示す(=がんになる人が増加したり減少したりする)ようで、動物性食品の興味深いカテゴリー。
▼乳製品の摂取量が多いと前立腺がんリスクが上昇することが示された。
▼デンマークの研究では、乳製品(特に牛乳)の摂取と卵巣がんリスク増加の関連性が認められた。
▼赤身の肉・加工肉の摂取と乳がんリスク増加には関連性が見られる。燻製肉も、毎日摂取する人では乳がんリスクが大幅に増加している。
▼魚の摂取量が多いと、食道がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、肝臓がんのリスクが減少することが分かっている
▼魚はがんを予防するようだ。唯一の例外は揚げた魚かもしれない。魚を揚げると、魚のオメガ3含有量が減少し、HCA、酸化脂質、トランス脂肪酸が生成され、これらはすべてがんのリスクを高める。症例対照研究では、魚を揚げると膵臓がんのリスクが増加することがわかった。
▼鶏肉はがんリスクの減少につながる可能性がある。鶏肉の摂取と大腸がんを調べたメタ分析では、1日あたり少なくとも50gの鶏肉の摂取で有意な逆相関が示された。
▼食事から摂取する総脂肪、特に赤身の肉と乳製品に含まれる飽和脂肪は、膵臓がんのリスク増加と関連している。
▼カルシウムとビタミンDも、乳がん細胞に対する抗発がん効果をもたらす可能性があると仮説をたてている。
▼大腸がんのメタ分析では、牛乳 (1 日 7 オンス) とチーズを除く乳製品 (1 日 14 オンス) の摂取量が多いと、統計的に有意なリスク低下が示された (33)。カルシウム補給 (1 日 1200~2000 mg) で大腸がん再発リスクが減少することが判明した試験結果から、これは、カルシウムの摂取量が多いためである可能性が高いと仮説を立てている。
<卵に関して>
▼特に前立腺がんについては、リスク増加を発見した研究がいくつかある。
⇒(1)1週間に2.5個以上の卵を摂取した健康な男性は、1週間に0.5個未満の卵を摂取した男性と比較して、致死的な前立腺がんのリスクが 81% 増加した。
(2)卵を最も多く(週5個以上)摂取する人は、全く卵を摂取しない人に比べて、前立腺がんだけでなく乳がんや卵巣がんのリスクもわずかに高いことが示された。
・これらは卵に含まれるコレステロールとコリンのレベルが高いためだと見られている
▼卵の摂取と消化管がんのリスク増加との関連が裏付けられた。大腸がんと西洋人集団との相関関係はより強かった。
▼特に閉経後女性で、卵の摂取と乳がんのリスク増加との関連が示されている。(特に週に2個から5個の卵を摂取する人)
▼最近の別の症例対照研究では、食事によるコレステロール摂取と膀胱がんのリスクとの関連が示された。
※膀胱がんの全体的なリスクは、目玉焼きを週に6個摂取した場合、卵をまったく食べなかった人と比較して2倍になった。ゆで卵との関連は見られなかったため、原因は卵そのものではなく、高温調理の副産物にあるのではないかと疑問視されている。
★気になる人は、ぜひ原文をあたってください。今は日本語翻訳で読むこともできます。
★ただこれは多分、主に西欧の人たちを追跡調査した研究結果の分析かと思うので、日本人の場合は少し違うこともあるかもしれません。でもこれを読んで、ほぼ毎日朝食に目玉焼きを食べていたのですが、少し考えようかなと思いました!
◎次のページもよければ、どうぞ。